こころ、ふわり


半ば諦めたような言い方をした私に、徳山先生も澪も、何も言ってこなかった。


そのうち、料理が運ばれてきて食事を始める。


美味しいご飯を食べているのに、ちっとも心は満たされなかった。


そして、徳山先生たちを見ていると自分と比べてしまって、虚しさが倍増する。


この2人は色々なことがあったけれど、乗り越えて付き合い続けているというのに、私と芦屋先生はどうだろう。


もしも、万が一ということばかり考えてしまって、お互いがお互いの不利になるところを見たくなくて、それで別れてしまった。


それが決定的な違いなのかもしれない。


いまだに頭の中を時々駆け巡る、別れた日の会話。


「先生も……違う誰かを好きになっちゃうの?」


「……そうかもしれないね」


私の問いかけに、芦屋先生は確かにそう答えていた。


きっと、私はあの時こう言ってほしかったんだ。


違う人なんて好きにならないよ。
萩以外の子は好きにならないよ。


こんな風に言ってほしかったんだと思う。


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