こころ、ふわり
26 幻影


朝、目が覚めて時計を見ると、いつも起きる時間よりも30分ほど早かった。


二度寝しようかとも思ったけれど、眠れるわけもなくて。


仕方なく体を起こしてベッドから降りる。


枕元の目覚まし時計を止めると、カーテンを開いて窓の外を眺めた。


本格的に梅雨入りでもしたのか、空はどんよりしていた。


昨日、私は芦屋先生に告白をした。
好きだと伝えた。


本当は好きだということ以外にもっとたくさんの伝えたいことがあったはずだった。


でも、実際に口から出てきた言葉はボキャブラリーも何も無い、シンプルな言葉。


それに、キスなんてするつもりは無かった。


それなのに、言葉じゃない「好き」を表すにはキスしか思いつかなくて。


勢いに任せてなんてことをしたんだ、とちょっとだけ後悔していた。


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