こころ、ふわり


まさか芦屋先生がまだ学校にいるとは思わなかった。


「先生、どうしてここに?」


私が尋ねると、先生は少し戸惑ったように


「どうしてって、すぐそこ美術室だからね。美術部の部員が帰った後はここで仕事したり、職員室で仕事したりしてるんだよ」


と答えてくれた。


「そ、そうですよね……」


なんて頭の悪い質問をしてしまったんだ、と後悔しながら私は立ち上がった。


「吉澤さんはどうしてここで寝てたの?」


芦屋先生の問いかけで、寝顔を見られた羞恥心に加えて、先生に会いたくてここに来たという理由以外でなにか妥当な言い訳はないか必死に考えた。


「部活で疲れてしまって、少し休憩してから帰ろうと思って……」


こんなところで休憩なんておかしいと思うに決まっている。


でも芦屋先生は私の答えに突っ込んでくることは無かった。


「休憩してたら、寝てしまったんだね」


先生は楽しそうに笑っていた。


変な生徒だと思っているのだろうな。


私は自分の気分が沈んでいくのが分かった。


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