DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
MISSION 24 ― 空飛ぶワンダー・イーグル ―

 神部の部屋を出て一旦パーティー会場に戻ると、千聖はワインのグラスを二つ手にした。

 片方を瞳に差し出しかけて直ぐに「あっ……」と声を漏らし手を引っ込める。

「どうかしました?」

 その行動に、瞳は首を傾げた。

「いや、瞳さんがまだ未成年だという事を忘れていて――」

「あら、そんな事構いませんわ」

「でも……」

 瞳が伸ばした手から、千聖がグラスを遠ざける。

「ワインぐらい大丈夫です。大学のコンパでは、ウイスキーだって飲んだ事がありますから」

 悪戯そうに微笑むと、瞳は千聖の手からワイングラスを奪い取った。

 少し俯き加減で苦笑を漏らし、千聖が上目遣いで瞳を捉える。

「いけない人だ」

「それに、もしも酔ってしまっても、千聖さんが介抱してくださるでしょう?」

 確かに、酔ったからという理由を付ければ相手を誘い易くなる。

 軽くグラスを掲げた瞳に、千聖は肩を竦めた。

 船は静かな海を走り続けて、再び港へと戻っていく。

 千聖はチラリと時計に目をやると、瞳の肩を抱き寄せた。

「瞳さん、そろそろデッキに――」

「……ええ」

 嬉しそうに肯いた瞳の耳元へ囁く。

「では、僕は瞳さんへのプレゼントを用意してきますから、あなたはさっきの場所で待っていてください」

「分かりました」

 微笑んで、瞳がその場を後にする。

 千聖は瞳の背中を見送り、ホールへ向かった。

 一旦洗面所へ寄り、ネクタイをブルーから赤へ取り替える。

 更にポケットから黒縁の眼鏡を取り出して掛けると、鏡の中の自分に口角を上げた。


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