DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~

「【影の名】は【ゴールデン・ディアー】や【ワンダーイーグル】などのような石の名前じゃなくて、その中にある影の名前【MADONNA】【APPLE】【RABBIT】【MOON】【EAGLE】【IVY】【DEAR】よ。同じ頭文字の【MADONNA】と【MOON】は【マジカルムーン】の石の中にある月が二つだから2の月と考えて、2番目の【M】とする。その全ての頭文字を取って【頭を捻る】つまりアナグラム。―― 【MARMEID】……これが答え」

「正解だ。良くできたよ」

 黙って聞いていた千聖は、軽く肩を竦めた。

「千聖は分かってたのね?」

「ああ」

「いつから?私にアナグラムの話しをしてくれた夜から?」

「ああ」

「どうして教えてくれなかったの?」

「石の回収を頼んでおいて今さらこんな事を言うのも変だけど、―― 未央を巻き込みたくなかったから。だけど、何にもならなかったみたいだな」

 振り向いた千聖の言葉に、未央は少し淋しそうに微笑んだ。

「そうよ。私を出し抜こうとしたって駄目よ。前に言ったでしょう?好きな人の考えている事くらい分かるって」

「そうだったな」

「それに石の秘密にパパの絵が関わっているのなら、私だって関わらないわけにいかないわ。そうでしょ?」

 千聖は一旦視線を落とすと髪を掻き上げた。

「―― 分かったよ。降参だ」

 キッパリと告げた未央に向かって、両手を肩の高さまで上げて見せる。

「その代わり、ここまでにしてくれ。この絵を回収したら、その先は俺一人の問題なんだから。それに――」

「分かってる。『危険だから』でしょう?」

 全てを口にする前に返された言葉へ、千聖が肯く。

「ああ」

「いいわ。そうする。私だって、二度と千聖の足手纏いになりたくないもの」

 未央は、この屋敷の庭でケルベロスに襲われた時の事を思い出して肯いた。



< 265 / 343 >

この作品をシェア

pagetop