DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
 少し考えてみる。

 言われてみれば、確かにそうだ。

 千聖に恋人が居るとなれば、あのお嬢さんも諦めるかもしれない。

 それなら―― と、真紀子は頷いた。

「恋人って言えるかどうかは分かりませんけど」

 と、前置きして続ける。

「知り合いの子とかいう、高校生の女の子と一緒に暮らしています。一度会ったんですけど、小柄な可愛い子でした」

「女性と一緒に暮らしていると?」

「ええ。さっきも電話がかかって来て、何だかデートだったみたいです。待ち合わせとか言って……。そうだわ……もしかしたら私の誘いを断ったのも、彼女と上手くいってるせいかも―― あっ……」

 神部の視線に気付いて、真紀子は真っ赤になった。

「そうでしたか。あなたも彼が……」

「あ、いえ、そんなんじゃ――」

「分かりますよ、あなたの気持ちも瞳さんの気持ちも。向坂君は男の私から見ても、なかなか魅力的ですからね」

 慌てて否定した真紀子を他所に、神部は運ばれてきたブランデーのグラスを手に取るとゆっくりと回し始めた。

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