DOUBLE STEAL ～イシヲモツモノ～

「彼は人の心を捉える術を知っている。いや、知っているというより、彼の持って生まれたものかも知れない。それにあの整った容姿、頭の良さ、身のこなし、意志の強さ……興味をそそられる。何処までも追い掛けて―― 捕まえて……手の中で転がすようにして眺めていたい気がする」

「神部さん……」

「そして――」

　グラスを少し高く翳し中身を飲み干すと、神部はそこで言葉を止めてニヤリと笑った。

　何だか分からない冷たいモノが背筋に触れたような気がして、真紀子は言葉を無くしたまま神部を見つめた。




…★……★……★…


☆NEXT☆

「それは彼が同じ穴のムジナだからだよ」

「ね、響。同じ穴のムジナって何？この神部って人がそう言ってるんだけど」

「ムジナってのは狸の事だけど。同じ穴に狸が沢山住んでるって意味じゃないの？」

「ふうん……。分かった、日本の住宅状況の事だね。小さい家に住んでいて狭いっていう」

「お嬢さん、それはウサギ小屋ですよ」

「え、違ってた？」

「………お先に失礼します」


　　MISSION 28
　　― 知られた秘密 ―　へ続く。