DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~

「あら、ごめんなさい。お友達でしたの。そちらはボーイフレンドでいらっしゃるのね?とてもよくお似合いですわ。可愛らしいカップルで」

「そ、そうですか?」

 響が嬉しそうに微笑んで頭を掻く。

「違い――」

 否定しようとした未央を無視して押し退けると、二人の女性はドアを大きく開けた。

「では、失礼いたします」

「御邪魔するわね」

 真紀子と瞳が競うように玄関で靴を脱ぐ。

「あ、あの……千聖は風邪で熱があって――」

「知ってるわよ。だから仕事休んだんでしょ?」

「ですから私、お見舞いに参りましたのよ。お花を買って」

「私だってそうよ。なんの役にも立たない花なんかじゃなく、氷を買ってね」

 言うや否や二人がプイッと顔を背ける。

 未央と響は顔を見合わせた。

 それとほぼ同時に、髪をクシャクシャと掴みながら千聖がリビングのドアを開ける。

「なんだよ……何の騒ぎ――」

 途端に二人は笑顔になった。

「千聖!」

「千聖さん!」

「真紀子……それに瞳さん。何?二人揃って」

 その言葉に素早く反応して、真紀子が不満を露にする。

「別に揃って来たわけじゃ無いわ。その人がついて来ただけよ」

 不満だったのは真紀子だけでは無いようで、瞳も少し唇を尖らせる。

「私、ついて来たのではありませんわ。ちゃんと自分で編集長さんに教えて頂いたんですもの」

「デスクのヤツ、余計な事を……」

 千聖は思わず額に手を当てて項垂れた。

 それを見た瞳がいきなり抱き付く。

「千聖さん!大丈夫ですか?しっかりなさって下さい。―― まあ、身体がこんなに熱いじゃありませんか!それにお顔に怪我を!でも、私が来たからにはもう大丈夫です」

「ちょっと!あんた何抱き付いてるのよ !? 千聖は病人なのよ!」

 真紀子は瞳の腕を掴んで引っ張った。


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