DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
MISSION 5 ― デザインを回収せよ ―

「それで、回収したい物は何なんですか?」

 早朝の公園で未央は犬の散歩に来ていた女性に訊いた。

 途端に、相手の女性は未央を見て目を丸くした。

「あなたが回収屋さんなの?」

「ええ、そうです」

「驚いたわね。もう少し……そう、二十代前半くらいの男の人だと思ってたわ」

 驚いた――

 それは正直な気持ちだろう。

 実際、未央だって自分が依頼する方なら、そんな風に想像したに違いなかった。

 けれど、若くて女だから頼りないとは思われたくは無い。

 だから依頼人と話す時は言葉遣いには目いっぱい気を付けて、知っている限りの難しい言葉で話すようにしていた。

「そう言われる事は多々あります。それは致し方の無い事だとも思っています」

 大人びた未央の口調に、女性は少し微笑んだ。

「信用していいのかしら?」

「それはあなたの判断にお任せします。けれど、今まで受けた仕事に失敗はありません」

 女性は片手を頬にあてて、足下に大人しく座っている愛犬へ視線を落とした。

「報酬は回収した物と引き替えで結構です。万が一失敗した場合はもちろん費用など頂きません。回収する時に私に何かあっても、依頼人に迷惑を掛けるような事は絶対にありません」

「そう。じゃあお願いしようかしら」

 まるで犬に語りかける様に、その人はそれの頭を撫でながら話し始めた。

「今私はあるデザイナーのところで働いているのだけど……私のデザインを回収して欲しいの」

「デザイン……ですか?」

 一風変わった標的に、今度は未央が目を丸くした。

「ええ、ウエディングドレスのデザインなの」

「そのデザインが、あなたの物だと証明できる物はありますか?」

「ええ」

 答えて、女性は手提げ袋から一冊の古ぼけたノートを取りだした。

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