DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
MISSION 8 ― 小さな嫉妬 ―
 壁にもたれて缶コーヒーを口に運ぶ。

 足音がまた近付いて来た。

 今度は三人。

 こちらへ来る。

 さっきの警備員も居るようだ。

 千聖は腕時計に目をやった。

「あと三分弱」

 足音は益々近付き、やがて廊下の角を曲がってその主が姿を現した。

「あなた……まだここにいらしたんですか」

 警備員は今度は少し訝しげに、先程関東日報の記者だと名乗った男を見た。

「ああ、さっきの――。ええ、相棒のカメラマンとここで待ち合わせだって言うから待ってるのに、全然来なくて困ってるんですよね。そいつ美人に弱いから、時間忘れてモデル撮りまくってるのかも」

「ほう。待ち合わせですか」

 一緒にいた警官は、記者の頭の先から足の先までを見ながら訊いた。

 もしかしたらこの男が回収屋なのではないか?

 そう思っている事はみえみえだ。

 未だかつて回収屋が男か女かすら知られていないのだから、仕方が無い。

「そうですよ。上司の指示だから動けなくて。あなた方も分かるでしょう?」

 少し肩を竦めて千聖は答えた。

「本当はほら、さっき聞いた回収屋の件。ドレスが消えた現場を見に行きたいのに」

 さりげなく腕時計に目をやる。

 さっき部屋を出てから八分が経過していた。

「こんなに時間経っちゃってるよ。最悪だな。もう逃げちゃったかな。でも、あなた方が動き回ってるって事はまだこの中にいる可能性があるって事か。そうだ、何か分かりましたか?回収屋ってどんな奴なんです?男ですか女ですか?女だったら美人ですか?姿を見た人は居るんですか?居たら話きかせて貰えませんかね。これ記事に出来たら最高なんだけどな」

 ペラペラとよく喋る若い記者を呆れたように見ていた警官が、その言葉尻を捕らえて問い掛ける。

「あんた、事件が起きて嬉しいのかね?」

< 85 / 343 >

この作品をシェア

pagetop