DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
「あ、スミマセン。そう見えたなら謝ります。でも、分かってくださいよ。ウエディングドレスのコンクールなんか新人のおまえで十分だなんて言われて来たんですよ、それが回収屋の事件に遭遇するなんてラッキー……」

 警官の鋭い視線を感じたのか、記者は一旦言葉を止めて肩を竦めた。

 それでもまだ喋り足りないようで――

「喜んじゃいけないって分かってるんですけど、仕方ないんです。俺の仕事は記事を書く事だから。同じ書くなら面白い方がいいでしょ?ねぇ、何か分かってる事だけでも教えて貰えませんか?」

「そんな事より、その後誰かここへ来ましたか?」

 警官は溜め息をついて話を変えた。

「来ましたよ」

「どんな人物ですか?」

「雑用係の子が。声掛けたら修理に出す物があるって言って、そこの部屋に入って行ったけど。なんかクソ真面目そうな、ビビッと感じないって言うか、ナンパしたいとも思わないタイプ」

 千聖の言葉に警官と警備員が顔を見合わせる。

 それから、いい加減もうこの男とは話したくないとでも言うように「それはどうも」と短く告げてドアに向かった。

 先頭に立っていた先程の警備員がノブを掴もうとした瞬間、記者は「あっ!」と声を上げた。

「どうしました?」

「いえ、バイブレーターが――」

 手を止めて振り向いた三人に微笑んで、ポケットから携帯電話を取り出す。

「連絡来たみたいです」

 社交辞令で「それは良かったですね」と答えた警官に、記者は軽く手を上げた。

「じゃ、どうも―― あ、俺です。えっ?何処に居るって?ベイシティホテルですよ。四階の―― えっ!違う?なぁんだ。だからいくら待っても来ないのか。最悪だ。へぇい……すぐ行きまぁす――」

 記者が話しながら廊下の角に姿を消すと、警官は溜息を吐いた。

「今の若い者は、新聞記者まであんな軽い感じなのか」

「仕方ないです。そういう時代なんですよ」

 気を取り直してもう一度ノブに手を伸ばす。

 途端にドアが中から開いた。

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