DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
MISSION 9 ― コメットへの挑戦状 ―
「それでは、影山十三氏秘蔵の宝石を展示するにあたり――」

 世界の秘宝展と銘打って大々的なイベントを行う事になったキングデパートが、宣伝のために記者会見を開くという事で千聖はその会場を訪れていた。

 影山という人物のもの以外に、海外からも多数の珍しい宝石や宝石を贅沢に飾り付けたティァラや宝石箱なども展示されるらしく、デパート側は警備にかなりの費用を使うのではないかと記者の間では展示される品物自体よりそちらの方が話題になっていた。

 というのも宝石専門の怪盗、コメットが現れるのではと期待―― いや、予想していたからだ。

「では、質問のある方はどうぞ」

「はい。えぇと―― 警備の方はどのようにされるのですか?」

 質問を受けるというデパート側に、記者がさっそく声を上げた。

「展示物より警備ですか。随分いきなりですね。―― では、周囲を御覧ください」

 何処か自信ありげな、警備担当の木村という男の言葉に全員が辺りを見回す。

 四角い部屋の四隅、そしてサイコロの四の目のように中央の空間を囲んでいる四本の柱のそれぞれ四隅に監視カメラが設置されている。

 壁際、そして柱の周囲に展示用のケースが置かれるとしても、カメラから死角になる部分は全くなかった。

「ここは、秘宝展の会場になる部屋です。このように監視カメラをたっぷり設置してあります。そしてここで撮られた映像は、すぐ隣の警備室に無線で届くようになっています。ですから、例えばここで何かが起きてもすぐに警備員が駆け付けて来るというわけです」

「他には?」

「出入り口は一ヶ所。ドアは特製の四重ロックになっています。暗証番号を知る一部の者にしか開けられません。ドアが閉まれば完全な密室になります。当然宝石が入っているケースも防弾ガラスで、取り付けられている鍵も特殊な物です」

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