Faylay~しあわせの魔法
セルティア王都、フォルセリアから針葉樹林を南へ半日かけて下ると、フェイレイたちの住むギルド・セルティア支部がある。

この星の惑星王が住まう皇都にある本部から比べれば小さいが、それでもギルドが運営する職業養成学校と学生たち、職員たち、その家族の住まい、それを支える店が並べば、ひとつの街が出来上がる。

オレンジの屋根にクリーム色の壁の家が並ぶ住宅街を抜け、食料や日用品、養成学校御用達の武器・防具、洋裁、書店が並ぶ商店街を抜け、静かな各種職業学校の校舎通りを抜けた、その先に。

存在を主張するかのように高く聳え立つ、傭兵派遣業務を請け負うセンタービルがあった。

任務を終えたパーティは、まずここに報告をしなければならない。

そのつもりで歩いていた2人だが、フェイレイがふと、思い出したように走り出した。

「ちょっと待ってて」

リディルにそう言い残すと、煉瓦敷きの歩道を弾むように走っていき、学舎を取り囲む塀の間にポツンとある、銀色のフラー銀行自動預け払い機に飛びついた。

左手首にはめている黒いバングルには、ギルドに所属する者達に与えられたIDチップが埋め込まれていて、それを使えば自分の口座に入っている預貯金などが端末から確認できる。

バングルを認証読み取り装置にあてると、軽い電子音が響く。

それから、表示されたパネルを操作して今回の任務で支払われた報酬の確認をすると……。

「おおっ、さすが王様、早い!」

今さっき終わったばかりの任務の報酬は、すでに口座に振り込まれていて、その金額にフェイレイは飛び上がった。

「やった、100万フラーも入ってる。さっすが、王様直々の依頼は報酬が違う~!」

拳を握り締めてガッツポーズを作っていると、リディルがそっと隣に並んだ。


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