Faylay~しあわせの魔法
あの光景が、目の前から消えない。

「おかあさま……」

ただ、それだけを呟く。

母と同じに剣で貫かれるクライヴ。

母も。

何度も、何度も、何度も……。

貫かれた。


「い、や」

リディアーナの中で、何かが弾けた。

「いやあああああああああ!!」





その叫び声がサイラスのもとに届いたとき。

辺りに光が迸り、何も、見えなくなった。



サイラスが気付いたときには、リディアーナとクライヴの姿は消えていた。

そして込み入った路地裏だった場所が、更地のように何もない、ガランとした白い大地へと変貌していた。

一体何が起きたというのか。

サイラスにはさっぱり分からない。

ただ。

白い大地の中心に横たわるシャンテルの亡骸は。

あれほど攻撃を受けたにも関わらず、その傷は綺麗さっぱり消えていて。

ただ、眠っているかのように、安らかな顔をしていたのだ──。






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