Faylay~しあわせの魔法
膝上まで雪の中にくぐらせながら、緩やかな斜面を登っていくうちに、フェイレイは何だか懐かしい空気を感じた。

「あれ……?」

猛吹雪の中にいた頃は、まったく感じなかったけれど。

確かに、記憶のどこかにどこまでも白く続く雪原と、つん、と鼻を刺す冷たい空気がしまいこまれている。そんな気がした。

辺りに視線をやりながら歩いていたフェイレイは、雲が切れ、くっきりとした濃紺の夜空が現れたのを見て、笑顔を作った。

「そうか。ここだ」

フェイレイは少し後ろを歩いているリディルを手招きした。

「リディル、早く!」

「え?」

「早く来て!」

リディルは言われるままに足を速めようとしたが、雪の上は歩きづらく、急ごうとすればするほどよろけてしまう。

それをもどかしげに見ていたフェイレイは、ズブズブと来た道を戻り、ヨロヨロしているリディルを抱き上げた。

「わ、何?」

「いいから!」

歩きづらい雪の上を懸命に走り──と言っても、ほぼ歩くスピードと変わらなかったが──フェイレイは雪の丘を駆け上がった。

「フェイ?」

戸惑いがちにリディルが声をかけると、フェイレイは笑顔で空を見上げた。

「リディル、空!」
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