Faylay~しあわせの魔法
言われるままに見上げた紺色の空には、緑白色の光がカーテンのように広がり、ゆったりとした動きで形と色を絶えず変化させていた。

渦状になったり、ほどけて広がっていったり。緑色を濃くしたり、白く光ったり、薄いピンクや紫が重なっていったり。穏やかな風に揺れるように、ゆったりと。

「オーロラ……」

澄んだ夜空を彩る美しい光景に、リディルは見惚れた。

「うん」

「凄いね」

そう言うリディルを見上げた後、雪の上に静かに下ろしてやった。

「俺、小さい頃ここに来たよ。思い出した。父さんと母さんと3人で見た。……あのときより、はっきり見えるな」

吐き出される白い息が、オーロラの柔らかな緑白色に溶け込んで消えていく。

「……母さんも一緒に、来れれば良かった」

フェイレイの穏やかな声に、微かな哀しみが混じっていたので、リディルは彼の手をそっと握り締めた。

分厚いグローブ越しでは、体温すら伝わらないけれど。

想いだけは優しく伝わってきて、フェイレイはリディルの手を握り返した。


そのうちヴァンガードたちも追いついて、後ろからは感嘆の声が聞こえてきた。それに振り返り、笑顔を向けていると。

オーロラの下から、声が聞こえてきた。

ゆるやかな斜面の下を見下ろすと、遠くに微かに見える街の灯りの中から、黒い影が飛び出してきた。

「フェイ! リディル!」

そう叫びながら手を振る、大きな人影に。

「父さん!」

フェイレイは笑顔で手を振り返した。



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