Faylay~しあわせの魔法
前を歩き出した2人の後姿を見た後、ヴァンガードは『約束の誓い』をした方の手を眺めた。

「……偽善だよ」

唇を噛んでギュッと拳を握り締めると、厳しい面差しをしたまま歩き出す。



魔族が頻繁に現れるため、通る人もまばらな街道。

そこに現れる敵を、フェイレイがわざと止めを刺さずに残しておき、ヴァンガードが倒していく、という実技訓練を行いながら歩いていくと、だんだんと陽が暮れてきた。

エスティーナまではまだ距離があるため、適当なところで野営することにした。

低周波の出る魔族避けのテントを張り、簡単に食べられる缶詰の携帯食で夕飯を済ませ、早々に床につくことにする。

「ヴァン、いいか。こういうときは、レディファースト、なんだぞ」

「はい」

フェイレイの言うとおり、リディルにはテントに寝てもらい、自分たちはその入り口の前に陣取って、テントに背を預けながら休む。そうしながら魔族に襲われないように寝ずの番をするのだ。

夜明け前にリディルと交代し、見張りを変わってもらう予定だ。

「ヴァンがいるなら、もう一個テント用意した方がいいかなー」

「そのときは、僕が持ちますよ。最近はどんどん軽量化されてて、僕のように力がなくても簡単に持ち運び出来ますから」

「そうか? じゃあそのときは頼むよ。食料は俺が持ってやるから」

「はい、よろしくお願いします」

にこにこと受け答えするヴァンガードを、フェイレイは素直でかわいい弟が出来たようで嬉しく思っていた。

彼が抱える、暗い感情に気付きもしないで。

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