Faylay~しあわせの魔法
鏡の前に並べられているのは、ローズマリーの私物と、シルヴァ側から提供された化粧道具である。
着替え終わったらヴァンガードに被せる予定の銀髪ウィッグを胸に抱え、じいっと、キラキラ輝く小瓶を眺めている。
(……興味、あるんだ)
何にも興味を示さなくて、ちょっと心配していたけれど。
それは単に、ギルドという環境がそうさせていたのだろうか。
外に出ればちゃんと年相応の興味が出てくるのか。
何だかそれが嬉しくて、フェイレイは顔を綻ばせてリディルを見守る。
青い顔でフラついていたヴァンガードは、ドレッサーの前にいるリディルが、銀に光るスティックを手に取ったのを見た。
キャップを外してくるりと回せば、綺麗な桃色の口紅が顔を出す。
くるりと振り返ったリディルは、白い頬をほんのりと染め、ヴァンガードを見た。何か、訴えかけるような目で。
ヴァンガードは嫌な予感がした。
あのキラキラ光る翡翠の瞳を見つめ返してはいけないと本能で感じ取ったが、皇女殿下護衛係である彼が、そんな無礼なことが出来るはずもなく。
ひしひしと何かを訴えかけてくる瞳に、何かを諦めた。
「……何でしょうか」
リディルはそっと、ヴァンガードに歩み寄り、少しだけ上目遣いで──見ようによっては、甘えるように──訊ねた。
「これ、塗っても、いい?」
「……誰にですか」
「ヴァンに」
ああ、やっぱり、と思ったけれど。
「……好きにしてください」
ヴァンガードは色々と諦めた。
そしてフェイレイは苦笑しながらそれを見守っていた。
着替え終わったらヴァンガードに被せる予定の銀髪ウィッグを胸に抱え、じいっと、キラキラ輝く小瓶を眺めている。
(……興味、あるんだ)
何にも興味を示さなくて、ちょっと心配していたけれど。
それは単に、ギルドという環境がそうさせていたのだろうか。
外に出ればちゃんと年相応の興味が出てくるのか。
何だかそれが嬉しくて、フェイレイは顔を綻ばせてリディルを見守る。
青い顔でフラついていたヴァンガードは、ドレッサーの前にいるリディルが、銀に光るスティックを手に取ったのを見た。
キャップを外してくるりと回せば、綺麗な桃色の口紅が顔を出す。
くるりと振り返ったリディルは、白い頬をほんのりと染め、ヴァンガードを見た。何か、訴えかけるような目で。
ヴァンガードは嫌な予感がした。
あのキラキラ光る翡翠の瞳を見つめ返してはいけないと本能で感じ取ったが、皇女殿下護衛係である彼が、そんな無礼なことが出来るはずもなく。
ひしひしと何かを訴えかけてくる瞳に、何かを諦めた。
「……何でしょうか」
リディルはそっと、ヴァンガードに歩み寄り、少しだけ上目遣いで──見ようによっては、甘えるように──訊ねた。
「これ、塗っても、いい?」
「……誰にですか」
「ヴァンに」
ああ、やっぱり、と思ったけれど。
「……好きにしてください」
ヴァンガードは色々と諦めた。
そしてフェイレイは苦笑しながらそれを見守っていた。