Faylay~しあわせの魔法
フェイレイとアレクセイは剣を構えて向かい合った。
暗雲が頭のすぐ上に見える高さにある甲板には、常に強風が吹きつけている。それに乗って飛んでくる大粒の雨は、2人の身体を重く濡らした。
しかし、強風にも、頭から頬へ流れていく雨水にも瞬きをすることはなく、互いの姿を視界に捉えている。
目を──五感のすべてを相手から離したら、そこで終わりだ。
一瞬ののちに、勝負は決する。
フェイレイは初めてアレクセイと対峙したときのことを思い出した。
アリアの執務室で、リディルを連れて行かせまいとして戦ったあのときも、十分アレクセイの強さは感じてはいたが……今は、その比ではない。
あのとき、彼は本気ではなかったのだ。
その事実に愕然とした。
随分ローズマリーに鍛えられたと思ったが、自分はまだまだなのだと痛感させられる。ただ剣を突き合せている、たったそれだけのことで。
「どうしました、向かってこないのですか。私を倒さなければ、皇女殿下は皇都へお連れ致しますよ。そしてアライエルは火の海だ。セルティアのように」
アレクセイの言葉に、フェイレイの闘気が一気に膨れ上がった。
ゴウウと渦巻く風に目を細め、アレクセイは微笑する。
やはり。
彼には大切なものがあり過ぎるのだ。自分と違って。
──だからこそ、望みを託せる。
雷鳴が轟いた。
それが合図だった。
2人は同時に硬い甲板を蹴ると、一気に間合いを詰めて剣を振りかぶった。
暗雲が頭のすぐ上に見える高さにある甲板には、常に強風が吹きつけている。それに乗って飛んでくる大粒の雨は、2人の身体を重く濡らした。
しかし、強風にも、頭から頬へ流れていく雨水にも瞬きをすることはなく、互いの姿を視界に捉えている。
目を──五感のすべてを相手から離したら、そこで終わりだ。
一瞬ののちに、勝負は決する。
フェイレイは初めてアレクセイと対峙したときのことを思い出した。
アリアの執務室で、リディルを連れて行かせまいとして戦ったあのときも、十分アレクセイの強さは感じてはいたが……今は、その比ではない。
あのとき、彼は本気ではなかったのだ。
その事実に愕然とした。
随分ローズマリーに鍛えられたと思ったが、自分はまだまだなのだと痛感させられる。ただ剣を突き合せている、たったそれだけのことで。
「どうしました、向かってこないのですか。私を倒さなければ、皇女殿下は皇都へお連れ致しますよ。そしてアライエルは火の海だ。セルティアのように」
アレクセイの言葉に、フェイレイの闘気が一気に膨れ上がった。
ゴウウと渦巻く風に目を細め、アレクセイは微笑する。
やはり。
彼には大切なものがあり過ぎるのだ。自分と違って。
──だからこそ、望みを託せる。
雷鳴が轟いた。
それが合図だった。
2人は同時に硬い甲板を蹴ると、一気に間合いを詰めて剣を振りかぶった。