Faylay~しあわせの魔法
「お前の相手は、俺だ!」

剣を振りかぶり、ドラゴンに正面から斬り込んで行く。

ヴァンガードはハッと息を呑み込み、ひらりと翻る藍のマントを眺めた。

「──リディルさん、フェイレイさんが! ドラゴンの正面に!」

叫びながら、ドラゴンの身体が大きく膨らんだのを見た。大口を開いて赤黒い口の中を覗かせると、そこに赤い光が集まりだす。

「ブレスが来ます!」

『属性は』

「『火属性』です!」

ヴァンガードの声がリディルに届くのと同時に、フェイレイの周りを白い霧が覆った。彼の周りだけ急激に気温が下がり、その息は凍りそうなほど白く濁る。



ゴオオオオ、とドラゴンが火を噴いた。

火山のマグマのような灼熱地獄がフェイレイを襲う。だが、フェイレイはそのまま地面を蹴った。向かってくるマグマの息のど真ん中に勢い良く飛び込む。

「フェイレイさん!」

ヴァンガードが青くなって叫んだ直後、白い光に包まれたフェイレイが、マグマを突っ切ってドラゴンの目の前に現れた。

そして、今さっきブレスを吐き出したばかりのドラゴンの口の中に、折りたたんだままの剣を滑り込ませた。

腕ごと突っ込んで柄に力を加えると、剣はそこで変形し、刀身を伸ばした。

「グアアアアアア」

ドラゴンが吠える。

口内で変形した剣は、ドラゴンの上顎を突き抜けていた。

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