Faylay~しあわせの魔法
痛みに呻くドラゴンは、足を踏み鳴らして暴れる。剣を突き刺してきたフェイレイの腕を千切ろうと顎に力を入れる。

鋭い牙が腕に突き刺さり、脳天を突き上げるような痛みが走った。

「くっそ……」

このままでは逃げられない。

歯を食いしばって痛みに耐えていると、横からドラゴンの腕が飛んできた。それをブーツで蹴り飛ばし、なんとかやり過ごす。

このままでは腕が持たない。食い千切られる。

フェイレイはヴァンガードに目を向けた。

「ヴァン! 行けるか!?」

「えっ?」

「口の中に弾を叩き込め!」

「──ええっ!?」

確かにそれは、有効な攻撃方法だった。

硬い鱗に覆われたドラゴンに通常攻撃はまず無理だが、フェイレイによって僅かに開けられている口内に直接魔弾をぶち込めば、ダメージを与えられるはずだ。

しかし……。

ヴァンガードは今、足を挟まれていて照準をうまく合わせられない。さっきも片目を外してしまった。

おまけに、ドラゴンは暴れている。少しでも狙いが外れれば、フェイレイに当たってしまう。

仮に口内にうまく弾をぶち込んだとしても、近距離にいるフェイレイも無事では済まないだろう。

「そんな……」

迷うヴァンガードに、フェイレイが更に声をかけた。

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