Faylay~しあわせの魔法
『リディル』

そう声がして、リディルは薄く目を開ける。

酷く重い身体と思考。それらを無理に動かして、声の主を探す。

少しだけ彷徨わせた視線の先に、声の主はいた。

自分に向かって手を伸ばしながら、甲板から空へと身を落としていくフェイレイ。

その胸に鋭い刃が深く突き刺さっている姿が、網膜に焼きついている昔の光景と重なり、心臓が弾け飛びそうなほど揺れ動いた。


リディルは手を伸ばす。

その身だけでなく、命さえも広い空に落としていく彼に。

力の限り、手を伸ばした。


「いやああああああああ!!」






空が光った。

真っ白に、光った。

何もかもを包み込んで、そして、消し去っていく──。





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