Faylay~しあわせの魔法
各国の通信機能が徐々に回復し、世界の様子が知られるようになってからも、依然としてセルティアの情報は入ってこなかった。

もう誰も生き残っている人がいないのかもしれない。

そんな絶望的な考えが過ぎる日が続いたある日、アライエル王室からフェイレイへ通信が入った。


『久しぶりだな、フェイレイ=グリフィノー』

相変わらず不遜な態度のアライエル第五王女、イライザ姫の顔が、皇都ギルド内にある通信室の巨大モニターに映し出されている。

王女からの通信だということで、皇后陛下であるローズマリー、そしてヴァンガードも同席している。

「久しぶり。アライエルの人たちも元気?」

『災害で幾人かの尊い命は奪われたが……なんとか復興してきてはいる。このところ魔族が出没することも減ったしな』

「そうか……」

『空も海も通常運行が可能となった。そこで、我が国からセルティアへ視察団が赴くことになった』

「えっ!」

フェイレイ、そしてヴァンガードが椅子から立ち上がる。

『まったく通信が届かない状態にあるので、直接視察団が赴くことになったのだ。国境を接している国々も魔族の蹴撃の痕が激しく、手は貸せないとのことであったのでな。心配であろうが、報告があるまで今しばらく待ってくれ』

「……ありがとう」

『“勇者”の故郷であるからな。アライエルの民も心配しておるのだ』

イライザから出た『勇者』の言葉に、フェイレイの表情が一瞬曇る。

フェイレイをジッと見据えていたイライザは、その変化を見逃さなかった。

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