Faylay~しあわせの魔法
『……すまない』

イライザはフェイレイを見つめたまま謝る。

『私は“勇者伝説”の真実を知らなかった。知っておれば、お前たちに伝えることも、注意を促すことも出来ただろうに……』

その言葉に、ローズマリーは周囲へ視線を走らせた。

通信室ではギルドの職員たちが各国と通信をしている。こちらを注視している者はいないが、耳をそばだてている者は多い。

「イライザ姫。そのお話……直接、お伺いしたいところですわね」

鋭い視線を向けるローズマリーに、イライザも何か悟ったようだ。

『はい、皇后陛下。フェイレイ=グリフィノーには是非一度我が国に立ち寄り、国王陛下と謁見していただきたく思います』

どこから漏れるかも分からない通信での会話は、混乱を招く恐れがある。

世界へはすでに『これが真実である』という情報が伝わっているのだ。

「分かりました。近いうちにフェイレイくんをそちらへ送りますわ」

「え?」

勝手に決められ、フェイレイはローズマリーを見る。

ローズマリーはにっこりと微笑んだ。

「皇后命令です。行っていただけますわね」

「……ハイ」

恐ろしい笑顔に射竦められ、フェイレイは顔を引きつらせながら返事をした。

「ヴァンくんも一緒にお願いしますわね。フェイレイくん一人では、迷子にならないか心配です」

「はい、お任せください」

ヴァンガードはしっかりと頷いた。そしてローズマリーと顔を合わせ、笑みを浮かべる。

これで皇都に繋ぎとめられているフェイレイを、リディル探しの旅へ連れて行ける……。

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