超人戦争
 これは、人類創世の御世(みよ)の物語である。
 その時政(じせい)宇内(うだい)は、神から任命された十二の天使によって治められていた。大地は、現在の地勢(ちせい)を形成したてであった。地球上には、各地域の天使の尽力のお陰で次々に生物が育(はぐく)まれ、森林が地上に凄まじい勢いで拡大していったのである。
 然しながら、サタンが統治する南極だけは動物にも植物に恵まれず、生命の息吹(いぶき)が芽生(めば)えなかった。
 サタンは南極のオーロラを睥睨(へいげい)しつつ、溜息(ためいき)を洩(も)らす日々である。
「父上様、何故南極には生物が定着しないのでしょう。私は広大な寒冷地に、独りぼっちです。他の地域の天使達は動植物達から崇拝(すうはい)され、喜びも悲しみも分ち合い、一体となって暮らしています。私には、生物を育む能力が無いのでしょうか」
 サタンには、白光(はっこう)を放つ十二枚の羽根が有る。防寒の為その白銀の翼で全身を覆(おお)い、スカイブルーアイのみを天上に向けていた。
 天空は、何も応えない。真黒な空間を、サタンの眼前(がんぜん)に晒(さら)している。
サタンは神の意思に、反感を募(つの)らせた。
(どだいこんな氷の国に、動物や植物が定住できる訳が無い。父上はこんな土地を私に任せ、恥をかかせる積りなのか)
 南極を神から委任された当初、己の使命に全精力を燃上らせていたサタンは、生命体を幾つも極寒(ごっかん)の地に誕生させた。だがそれらのものは、死滅か移住という末路を辿(たど)った。サタンは現状に絶望しきっていた。

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