超人戦争
(ここは普通の生き物が生存するには、余りにも過酷だ)
 サタンは頭を抱えて、思案に耽(ふけ)った。
(ここで生きていく為には、平凡な生類(しょうるい)では駄目なのだ。ならばここで生きていける様な、生物を造り出す他は無い)
 天使が勝手に命あるものを創作することは、御法度(ごはっと)であった。新たなる種を創出するのは“自然”という名の神にのみ許された、神聖なる行為なのである。
(南極を生気に溢れた楽園にするのが、私の務めだ。その目的を遂(すい)行(こう)するには、例え神法(しんぽう)に背く事になろうとも、致し方の無いことだ。不毛の風土に耐えうる種族を、創り出そう)
 サタンは決意した。自己の為ではない。この儘何も無い土地として、南極が捨て置かれるのが空(むな)しいのだ。極地の未来が、サタンの双肩(そうけん)に懸(かか)っているのである。南極の栄光の為に、サタンは父である神の威光に挑戦することにした。
 サタンは翌日より、行動を開始した。
 サタンが考案したのは、人間と他の動植物の混合である。サタンは先ず百体の人類と千もの野獣、植物を、世界各地から現在ハード島と呼称される無人島に移した。
 そして人の中より最屈強と認定した若者ゼノンを選出し、鷲(わし)と合体させた。初めての試みなので、どういう副作用が起きるか予測できなかった。サタンは細心の注意を払って、成行きを見守ったのである。
 ゼノンは強靭(きょうじん)な肉体と意志力を兼備した漢(おとこ)だったので、異種合一の試練を克服し、見事と言おうか異様な怪物となった。
 交結(こうけつ)によって超人類となったゼノンは、超能力を増長すべく牛、更には三人の男女と交わり、化物へと成長していった。
 ハード島では丸二日間、変身の儀式が繰返された。三日目の朝が明けた頃、孤島は最初のモンスターアイランドとなっていたのである。

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