超人戦争
 今で言うタスマニア島に於いて、悪魔問題を討議すべく、その日十二の天使が参集していた。
 大空には、これからの波乱を予告するかの如く、暗雲がたちこめている。天使達の面(めん)色(しょく)は、少なくとも表面上は静穏(せいおん)である。
 会議は現代風の刻限で、午後一時に開幕した。一同やや波高の大洋に臨んで、佇立(ちょりつ)している。空の上から俯瞰(ふかん)すると、金色(こんじき)に輝(き)映(えい)する丸い輪みたいだ。
「本日は、各地で人類に脅威を与え続けている悪魔について、忌憚(きたん)の無い意見を述べて貰うべく、皆に集参(しゅうさん)して頂いた」
 議長である髭もじゃのゼウスが開口すると、空(す)かさず端正(たんせい)な容貌(ようぼう)のサタンが口(こう)言(げん)した。
「議長、悪魔ではありません。超人です」
 議場は、凍(こお)りついた。
「成る程」
 ゼウスは、十二天使の長(おさ)と、一応目されている。如何にも長者らしく頷(うなず)き、
「では、此処(ここ)では超人と呼ぶことにしよう」
 と参会者に宣言した。
「議長」
 大天使と尊称されているミカエルが、発言を求めている。ゼウスは容認した。
「超人達は、父上が造られたものではありません」
 ミカエルは、サタンを見据えた。
「この、サタンが勝手に創造した怪物です。この様な神(しん)法(ぽう)外の生物、然も凶悪で残忍なる生物は、地球上より除去すべきでありましょう」
 初(しょ)っ端(ぱな)より本音の意見に、会場には緊張が走っている。全員サタンの対応に、注目した。
「何と、これはミカエルの言葉とも思えぬ」
 サタンは、怒り心頭に発しているようだ。
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