超人戦争
 サタンがこの世に送り出した妖獣達は、人知を超越した能(のう)幹(かん)を身に付け、野獣の強烈な闘争本能と体力に恵まれ、木々の粘り強い生命力を併せ持っていた。
 怪獣達はやがて一週間、島内で抗争を続けた。この闘争の結果、悪鬼界の秩序が定まったのである。
 ゼノンが一群のリーダーとなり、生き残った五十の悪魔が、繁殖すべく天下に散っていったのだ。
 妖鬼達は生きとし生きるものを続々と南極へさらい、合流させていった。その数は瞬く間に増加していき、南極に彼等の王国が建設されたのだった。
 ゼノンを王とする南極王国建国は、サタンを満足させた。
 併し南極以外の大陸を分治(ぶんち)している天使達は、困惑していた。南極の妖怪共は他所(よそ)の食物を強奪し、旺盛(おうせい)な食欲で咀嚼(そしゃく)してしまう。奴等は元はホモサピエンスでありながら、ヒトを好物にし、食していた。
 人民に管轄(かんかつ)区域の支配権を貸与(たいよ)しようとしていた天使達は、民衆の脅威となってきている得体の知れぬ南極の怪人を嫌忌(けんき)するようになった。
 そしてサタンに、
「悪魔(悪魔とは人間が名付けたもので、ゼノン等は超人と自称している)達を、南極外に出さないようにしてくれ」
 と依頼した。
 天使一同の懇願(こんがん)を受けて、現今(げんこん)オーストラリアと命名されている大陸で、十二の天使達による会議が開催される運びとなった。サタンはゼウス以下十一の天使と、対決姿勢を強めている。何事も超人達と南極の為である。サタンは例え天使、神に逆らう羽目(はめ)になろうとも、飽く迄も闘い抜く覚悟をしていた。

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