小春日和
小春ちゃんはずっとずっと苦しんでたんだ。
さっきの小春ちゃんの泣き顔が頭から離れない。
アタシを困らせたくなくて、傷つけたくなくて自分の気持ちを殺そうとしていたなんて。
ねぇ小春ちゃん。ごめんね…。
アタシは無意識に動き出していた。
イスから立ち上がって、ベッドの枕もとに手を突いた。
眠っている小春ちゃんの顔にそっと自分の顔を近づける。
あと少しで唇が触れると思ったとき…。
カシャッ。
聞こえた、機械的なシャッター音。
我に返って音のした方を見ると、カーテンの隙間から携帯電話を構えた野田くんが見えた。
「みーちゃった」
楽しそうに言う野田くんを見て背中に冷や汗が流れるのを感じた。
野田くんはそのままアタシに背を向けて保健室を出て行った。
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