ACcess -縁-
歩くスピードが心なしか早くなる。
地上に戻らなければ…。

しかし、その思いも打ち砕かれた。

さっきまであったはずの階段が見つからない。

少し焦り、きっと錯乱状態なんだと言い聞かせる。
落ち着くんだ、と。

見落としてるかも。
マップを出す。
見当たらない。

バグなんだよ。
もう一回見て回ろう。

そうだ、そうなんだと心の中で自分自身と会話した。
手が汗ばみ、コントローラーを握る手が震えているような気がするのは、バイブレーション機能のせいなんだ。

そして、なんだか足を止めたらいけないような気がして、必死に動き回る。


カツン、カツン――


体がビクリと跳ねた。


カツン、カツン――


フィールドで聞いたあの音だ。

あの時は特に気にも止めなかった。
ただ、今は胸騒ぎが止まない。

カツン、カツン――

カツン――

――


音から遠ざかるように走る。

しかし、どこから聞こえてくるのか全くわからない。

闇雲に走ってはいけない、そう思うが…。
「…くそっ!」

そこまで広いというわけでもない。
いつかはその得体の知れないモノと出くわしてしまう可能性だってある。

気持ちが焦ってしまい、何をしたらいいか分からない。

そうだ…!

強制ログアウト。
いや、強制的にPCの電源を落としてゲームをやめる。
これしか方法はない。

もしかしたら、ペッパーのデータが一部なくなったり破損する可能性もある。
でも今はそんな事言っている場合ではない。

逃げろ。

本能がそう言っている。

ゲームだぞ?

いや、ゲームでもだ。
危ない。
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