死霊むせび泣く声
 里夏が俺に腕を絡ませてくる。


 俺も躊躇いなしに絡ませ返した。


「和義」


「何?」


「まだあの霊のことは続いてるの?」


「ああ。……だけど、いずれ別の場所に引っ越すから」


 俺が心の中にある蟠(わだかま)りを笑い飛ばすように言う。


 所詮は誰かが作った都市伝説だろう。


 トイレの花子さんや口裂け女と同じで、根拠のまるでないものと同次元と思われるのだから。


 俺は別段気にしていなかった。


 こんなことで一々悩んでいたら、人生渡れないと思っていたのだし……。


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