死霊むせび泣く声
「ええ。基本的に苦いのより甘い方がいいから」 


「コーヒーはブラックで飲むのに?」


「うん。……でもどうしても、お酒になると甘い方がいいわね。特にカクテルなんかは」


 里夏がそう言って、テーブルに頬杖を付く。


 カウンター席に二人分のお酒が届けられたのは、それからものの数分後だった。


「じゃあ乾杯」


「乾杯」


 俺たちはそう言い合って、アルコールを含み始める。


 酔えば酔うほど、掛かっているBGMの聞こえ方が和やかになっていく。


 俺たちはしばらくの間、酔っ払った。


 俺にとってみれば、少しでも酔うことで、自分に迫っている恐怖感を取り除くのが一番なのだ。


 里夏はそんなことはまるで意識せずに、注いでもらっていたカクテルを飲み続ける。

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