死霊むせび泣く声
 俺も彼女ももうすぐ三十一歳になる。
 

 一つ年を取るごとに、互いの人生が充実していくのが手に取るように分かった。


 俺は一階に降りると、里夏が制服姿のまま待っていて、


「和義」


 と声を掛けてくる。


「ああ。……待った?」


「いえ。今来たばかりだから」


「じゃあ、ファミレスにでも行こうか?」


「そうね。あたしもお昼、おにぎりとパンしか食べてないから、お腹空いてるし」


 俺たちは声を掛け合って歩き出す。


 社から歩いてものの数分の場所にファミレスがあるのだ。


 二十四時間営業で、何かと若者に人気がある。


 俺たちは並んで歩きながら、街の景色を見つめていた。
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