死霊むせび泣く声
「もうすぐ秋ね」


「ああ。夏も終わりだな」


「例のあの心霊現象、収まった?」


「いや、まだなんだよ。俺も悩まされ続けてるんだけどな」


 今は金がないのだが、もし蓄(たくわ)えが増えて心の準備まで出来れば、俺は引越しするつもりでいた。


 もうあの今村武蔵介と綾田伊予丞の霊を二度と見たくないし、ヤツらの発する不気味なまでの啜り泣きの声など聞きたくもない。


 俺は小津原に頼んだ除霊は完全に失敗だと思っていた。


 里夏と並んで歩きながら、俺は夜空を見つめる。


 星が輝いていて、辺りが少し冷え始めると、秋の虫の音も聞こえてきた。


 俺たちはファミレスへと入っていく。


 そして今夜一緒に過ごせば、また愛が深まると思いながら……。


 それにしても小津原の言っていた、俺の住んでいるマンションが昔河原で、今村と綾田
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