おしゃべりな百合の花
 左腕は美百合の背中に回すと、両腕に力を込めて美百合を引き寄せ、胸に抱いた。


 美百合はそれに弾かれたように、声をあげて泣き出した。


 龍一は、さらにきつく抱き締めながら、泣きじゃくる美百合の耳元で優しく囁いた。


「言えよ。どうして欲しい?」


 美百合の泣き声が嗚咽に変わった。


「またお姫様抱っこか?」


 からかうように言う龍一に、美百合がやっとのことで答えた。


「そばに…いてくだ…さい…」






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