この青空を君へ。
街灯の下の彼はまるでスポットライトを浴びているみたいで、静かな夜の公園は彼だけのステージだった。


「お姉さんどうしたの?」
何も考えられず、そこに立つことしかできていなかったから、その言葉が私に向けられているってことに気づかなくてただ彼を方を見るだけ。


「どうしたの?嫌な事あったの?好きな歌教えてよ。元気が出るように歌ってあげるから」
やっとその呼びかけが私に向いていることに気づいて答えようとするけど、なかなか言葉がでない。

(好きな歌?・・・なんだっけ・・・ケイの好きな曲しか思い出せないよ・・・)


「スピッツとか?あとは・・・」
「さっきの曲・・・」
「え?」
「さっきの曲歌って欲しい。」

そう言うと彼は黙って頷いて、ギターを弾き始めた。





彼が歌い終わったとき、さっきまで聞こえなかった街の喧騒や虫の声が聞こえていた。
私の涙は乾いて、無理やり走った足が痛んだ。




「来週の金曜日もまたここにいるから」


彼はそう言い残し、ギターを片手に私の前から姿を消してしまった。
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