この青空を君へ。
美術室にやってきた。

夜の大学は少しだけ神聖な雰囲気に包まれていた。
月明かりの光が教室内にさしこんでいるからかもしれない。


私は元樹を、ある一枚の絵のところまで案内した。


…元樹は絵をじっと見つめた。

そして元樹の目からは、一滴の涙がこぼれ落ちた。


「…俺、絵をみて涙が出てきたの、今日が生まれてはじめてだよ…」


私を包む手の力がぎゅっと強くなる。
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