水音
そして、飲みながら二人でいろんな話をした。
お店の事、
コウさんの昔話、
健太クンが実はお酒が飲めない事、
「悠奈ちゃんがこんなに酒強いなら、健太より悠奈ちゃんにバー手伝ってもらおっかな?」
なんて言ったり。
それから、紗季さんがコウさんの幼馴染みだという事。
二人は仲が良くて、あたしは紗季さんとコウさんはもしかしたら恋愛関係があるのではと思ってたから、謎が溶けた感じだ。
それを言ったら、
「アイツだけはオレに惚れる事はないな!オレの本性を知ってるからね〜。」
「コウさんにも本性あるんですね…」
「悠奈ちゃん…?なんかあったか?」
そういうと、コウさんはカクテルを一杯作ってくれた。
綺麗なピンク色のグラデーションのカクテル。
「キレイ…」
一口飲んだ。
甘酸っぱい。
なんだか急に切なくなった。
酔っているからか、あたしはポツリ、ポツリ、話始めた。
誰にも話す事はないと思ってたのに…
家出したこと、
快との出会い、
そして、今日の出来事。
コウさんは黙って聞いてくれた。
最後に一言だけ、
「よく我慢したな。」
と言って、いつものようにポンポンと頭をなでてくれた。
その瞬間、あたしの頬に一粒涙が落ちた。
「何かあったらココに来いよ。」
コウさんが言ったのはそれだけ。
後はずっと、撫でてくれた。
紗季さんが前に言っていた。
「あいつは浮気男の代表だよ。」
だから正直、今回はこんな風に慰められると思わなかった。
彼氏の事をかばうでもなく、けなすでもなく、ただあたしを慰めてくれた事。
そして、居場所を作ってくれた事が嬉しかった。
それが嘘でも本当でもよかった。
ただこの頭を撫でている手の暖かさが真実だった。