水音
†幸福な時間†
そのまま快と一緒に住むことになった。

快は彼女と別れたばかりで、快の部屋にはまだ元カノの匂いが残っている。

二本のハブラシ、
化粧品、
二人のプリクラ、
…だけれど、そんな事は気にならなかった。

全く気にならないと言えば嘘だけど、全てを捨ててしまったあたしには、もう快しかいなかった。


“運命”の出会いだと思い込んでいた。


会ったばかりの快にもうはまってしまっていた。

「オレこんなに好きになったの初めてかも。」

ギュッと抱き締めて囁いてくれる言葉。

この言葉、この温もりを素直に信じることができた。

「あたしもこんなに好きになったのハジメテだよ…」


不思議……

このあたしが恋に溺れるなんて有り得なかったのに。

今まで、本気で誰かを好きになる事なんてなかった。
彼氏なんて、流行りの服飾品の様なものにしか思えなかった。

友達とのお喋りのタネ。

冷めたら終わり。

泣いてすがるとかしたことなんてない。

いつも遠くから自分を眺めているみたいに…


友達に対してもそう。

上べだけの付き合い。

親友と呼べるコはいたけど、中学の親友は高校に入ると連絡をとらなくなっていた。高校の親友は大学に入ると連絡をとらなくなっていた。

今だって、本気で心配してくれる友達はいないかもしれない。

会ったばかりの快だけど、本気になれる気がした。

もう何も持ってない裸の私を見てくれたのが嬉しかった。

着飾った私じゃなく、私自身を好きになったのだと思った。



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