甲子園の奇跡
清稜高校!壮絶な打撃戦を制して<初>の決勝進出!】

テレビの解説者が興奮気味に叫ぶ声が耳に入った。


春のセンバツ高校野球大会。

最後の打者を三振に仕留めると、エースとキャッチャーがマウンド上で抱き合った。

決勝進出を決め、ナインが2人を囲んで喜びを分かち合う。



「あら?この高校、心が行く高校じゃないの?」

テレビを見ながら言うお母さんに、あたしは小さく頷いた。


翌日、清稜高校は4-3の接戦で惜しくも敗れてしまう。


"あ~負けたんだ"

あたしはテレビをぼんやりと眺め、そんなことを思った。



白咲 心―シロサキ ココロ

今年の春から清稜高校に通う…予定。


ここに決めたのは『制服が可愛いから』という単純な理由。


再び視線をテレビにやると、歯を食いしばりぐっと涙を堪(コラ)える1人の高校球児が映っていた。


汗と一緒に流れ落ちた一粒の涙。

俯いていたので顔は見えなかったけど、思えばこの時からあたしは恋に落ちてたのかもしれない。

背番号1、エースナンバーの君に。
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