誠に生きた少女
第四話
永倉に近所の寺で過ごす子供の事を知らされてから五日後、奥村は沖田と甘味処にいた。
「あ、あの・・・」
「あれ、団子嫌いだった?」
その奥村の前で、おいしそうに団子をほお張っているのは、一番隊隊長の沖田だ。
昼が終わり、賄方の仕事が一段落し、休憩をもらえたため自室に向かって歩いていると、偶然沖田と出会った。
そして、気が付くと彼につれられなぜか甘味処で団子を前に座っていた。
「そうじゃなくて、何でまた俺なんかを?」
「うーん、たまには息抜きしないと。奥村君、慣れない仕事で気づかれしてそうだったからさ。」
そう言って、また団子を口に運んだ沖田が思い出したように言った。
「そうそう、ここね。優希のお気に入りの甘味処なんだ。」
「夜風さんの?」
「うん、ま、最近は忙しくて来ていないだろうけどね。」
彼の言葉にここ数日の様子を思い出してみる。
確かに、最近は優希を見かけることがあまりない。
この間、道場で急に仕事に向かってから、どうも慌しいらしいのだ。
「夜風さん、大丈夫ですかね。」
「大丈夫だよ。優希は強いから。」
さらりと、ためらいもなく返した沖田に、奥村は聞いてみた。
「夜風さんって、どのくらい強いんですか?」
奥村の言葉に、沖田は少し首をかしげて考え出した。
「うーん・・・十回やって十回勝てるのは永倉さんくらいじゃないかな?」
沖田の言葉に、奥村は口に運びかけた団子を戻した。
「・・・え?」
「僕は五分五分だからさ。優希と試合すると勝ったり負けたり。ま、平隊士じゃ相手になんないよ。」
何でもないように、沖田はまた団子を口に運んだ。