誠に生きた少女
「永倉さん、あの子達は?」
奥村の言葉に、永倉は歩きながら答えた。
「さきとゲン太はな、長州の浪士に親を殺された孤児だ。」
「・・・え。」
永倉の言葉に、奥村は足を止めた。
「この時代、珍しいことじゃねぇ。お前の時代は平和かも知れねぇが、この時代は殺さなきゃ殺される時代だ。少なくとも、俺達はその中に身を置いてる。」
「そう・・・ですよね。」
立ち止まる奥村に、小さくため息をつくと話を続けた。
「俺も立場上、詳しいことはしらねぇが、あいつらの親を殺したのは、優希が別口で追ってた人間らしい。」
「優希さんが?」
「あぁ。あいつらはその後、あの寺の住職に預けられた。まだ未来も決まってない。
だから優希が、時々顔を出して遊び相手をしてやってんだ。」
ま、総司の場合はあいつらに遊んで貰ってるんだけどな、と永倉は笑った。
そして、静かにまた話し出す。
「優希は後悔してんだ。もっと早く、任務をこなすべきだったとな。ま、あいつに落ち度はねぇんだけど・・・。」
永倉は、悲しそうな顔をして奥村を見た。
「ただ、優希は忙しい。だからよ、奥村、暇なときでいい。あいつらの相手、してやってくれ。」
永倉の頼みを、奥村は快く受け入れた。
「分かりました。・・・ていうか、永倉さん、子供苦手なんですか?」
先ほどの様子を見て、奥村がからかうように言った。
「・・・俺があいつらとかくれんぼでもしてみろ。次の日には、左之と平助の笑いの餌食だ。」
そういって頭を抱える永倉に、とてつもなく親近感を抱いてしまったことを、奥村はこっそり胸の奥にしまった。