蒲公英
「なんだよ、急に」

「俺は真剣に聞いてるんだよ。真面目に答えろ」

「そりゃ…好きだよ」

「恋と愛はちがうぞ。愛海」




12個の瞳が僕を見つめている。

僕は観念して言った。
河南子には一度も言ったことのない言葉だ。











「…愛してるよ」











「そうか」




マスターはもうなにも言わなかった。

春日とあかりがおめでとうと言ってくれた。




「よかったな」




大樹と未来も祝福の言葉をくれた。

だけど…。




「かわいそうな人」

「結婚は人生の墓場だ、とでも?」

「湧己のことじゃないわ」




稀沙だけは意味ありげに席を立った。

僕でなければ誰に向けられた言葉だったのか。

いつもどこか独特の雰囲気を漂わせた彼女の真意はわからなかったけど、その言葉だけはなぜかいつまでも耳に残っていた。
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