蒲公英
僕はしゃがんで蒲公英に触れた。











―湧己。











声が…、聞こえる。






―ねぇ、湧己?






穏やかな横顔。






―湧己…。






切なげな笑顔。






―大好きだよ。






照れたように目を伏せた沙羅。






―帰らないで。






少しだけ潤んだ瞳。






―ずっと…一緒にいるよ。






僕に触れる小さな手。






―こっち、見て?






重ねた唇。






―湧己…。






愛しい、愛しい沙羅のすべて。

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