蒲公英
「沙羅…」






愛してるよ。

僕はそう言いたいのを必死に堪え、愛しい蒲公英の女性に告げた。
















「俺…、明日結婚するよ」
















沙羅じゃない女性と、これからの一生を描いていくのだと…。

僕は彼女に宣言しに来たのだ。






どれだけ愛していたか。






愛しているか…。






未練なんて言葉じゃ飾りきれないこの想いを噛みしめながら。











僕は…、蒲公英の花を契った。











―摘んじゃだめだよ。











愛も約束も、すべて共に。











周りの泣き声が大きくなった。

だけど僕の涙は枯れていたのかもしれない。






…泣けないことがつらかった。






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