空き瓶ロマンス

兄の奇行



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ある日、朝起きたら珍しく兄が、先に起きてしかも台所で何かしていた。

正確には、しでかしていた。



「あ。おはよう、倫子」

「………おはよ」

兄は、何やらフライパンと格闘していた。

調理台に散らばっている残骸からして、

恐らくそのメニューはハムエッグだと分かったけど、残念ながら焦げ臭い……。

「何やって……」

「あ、もうすぐ出来るから向こう行ってていいぞ。テーブル拭いて待ってて」

「いや、それよりこっちのが……」

「おう、任しとけ」

「ううん、無理」
 
十数分後、何とか食卓を整える事ができた。
 
兄が作っていたのは、やっぱりハムエッグだった。

……焦げ焦げの。


私が用意したのは、冷凍しておいた食パンを焼いたトーストと、ジャムと、コーヒー牛乳。

サラダを作る余裕なんて無かった。

これでも、無理矢理私が台所に踏み入り、やっと出来た事だ。
 
何故か兄は、頑なな態度で私に台所を譲ろうとしなかった。

でもそれは、ここ最近私が家事を放棄していた腹いせではないようだった。



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