空き瓶ロマンス
 


余命二カ月。
 
宣告されて、もう一カ月近く経ったらしい。

だから、あと一カ月で母の命は終わる……。
 
母は、私が兄に連れられて病室を訪れると、今の夫だという人に支えられながら、時間をかけてゆっくり起き上がった。

ベッドの背もたれを起こして、背中にクッションをたくさん入れて、

それでようやく、椅子に座った私達と同じ目線になった。
 

私は……何て声をかければいいのか、分からなかった。
 
だけど母は、私達を見るなり目を細めて、弱弱しく笑った。

掠れる声で、「ごめんね、急に呼んじゃって」と言った。

 
今までたくさん、わがままばかりしてきたから。

きっとこれは罰ね。

なんてやけに諦めたような事を言っていて、母は私達に謝り続けた。



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