空き瓶ロマンス
いなくなってしまった事。
傍にいなかった事。
今まで会わなかった事も。
寂しい思いをさせたわね、と呟く母の瞳は、次第に涙で滲んでいった。
大きくなったわね、二人とも。
格好良いわよ、修。
美人になったね、倫子。
飾らない言葉で、母は私達を褒めた。
兄の手に触れながら、私の頬を撫でながら。
こんな事すらしてやれなくて、ごめんなさいと。
泣きながら、母は謝った。
落ち着いてから、母は小さな包みを二つ、枕の下から出した。箱みたいなものだった。
中身は、アクセサリーだった。
兄には、タイピン。
私には指輪だと言って、母はおそらく最初で最後になるのだろうプレゼントを、私達に手渡した。
こんなタイミングになってしまったけど、と。