過去作品集○中編
桜と同居していると聞いても、ユカの表情は変わらなかった。
もうアイツに俺は必要ないって事なんだって思った。
マンションに帰ってから、そんな事ばかり考えてた。
『あー……終わった』
つい、呟いてしまっただけの俺の言葉に、桜は食い入るように体を寄せた。
2人がけの小さなソファーがキシッと音を鳴らす。
こういうの何て言うんだっけ?
……自業自得か。
10時になると、桜はいつものようにリビングに布団を敷きはじめる。
ひんやりとした床に薄っぺらい布団。
『なぁ、いつもそこじゃ寒くねぇ?』
『だって他に部屋ないじゃん』
そりゃそうだ。
元々、一人暮らしするために借りたマンションなんだから部屋は一つしかないに決まってる。
『んじゃ、俺の部屋で寝れば? ヒーターもあるし』
『え!? 一緒に!?』
驚いて後退りをする桜。
何か笑えちゃったよ。
すっげぇ純粋な反応。
さすが高校生。
『俺がリビングで寝るんだよ』
俺はクックッと笑いながら桜の背中を押して部屋に誘導する。
『本当にいいの?』
『ん。 たまにはリビングでテレビ見ながら寝たいんだよね』
上手いこと桜を言い聞かせ部屋に入れた後、電気を消して自分も布団に入った。
『……マジで寒ぃ……』
寒さで目が冴(サ)える。
こんな寒い所でアイツ寝てたんか。
妊婦のくせに……
『翔? 起きてる?』
まだ5分も経ってないのに部屋のドアが開いた。
『やっぱ寒いでしょ? 部屋代わろうよ』
桜はそう言って隣に座る。
『じゃあ、桜もここで寝てくれる?』
半分冗談。
そんなこと桜が「いいよ」なんて言うわけないから、言ってみた。
ほら、早く警戒して部屋に戻ってけよ。
『しょーがないなぁ! ほら早く寝て! 明日も仕事でしょ?』
『え……?』
桜は俺を押し退け、布団に入る。
そして、腕を伸ばし、俺の頭の下に入れてきた。
『腕枕って…… そこまで頼んでないけど……』
『だって! 翔はユカさんがいなくて寂しいでしょ? だから……』
そう言われて、ハッと気付いたんだ。
自分が寂しがってるって事を……