さよならLetter

22歳。


ボクは進路を大学に行こうか悩んだけど、親父の美容室の跡継ぎとして美容師の専門学校に進んだ。

親の後を継ぐ。これはちゃんと考えてるけど、普通のサラリーマンだったら、いつルウコが倒れるかわからないから無理だと判断したのもある。

それにボクにはサラリーマンはあんまり向いていないと思うし。

自分の家の店にいるなら結構何があっても対応出来る、そう思った。



ルウコは4年生の大学に進んだけど、今回の妊娠で退学する事になった。

「休学して復帰してもいいんじゃないか?」

ボクの親もルウコの親もそう言ったけど、ルウコは「子供との生活が大事」と言って退学届をさっさと出してしまった。



ボクの安月給で食って行くことは出来てもルウコの病院代までは回らないから結局は親の援助が必要だ。

早く一人前にならないといけないと思う。



「ソウちゃん」


歩いていると声を掛けられ振り向くと、高校生時代のルウコにそっくりなルミが立っていた。ルミももう高1だ。

ルミももしかすると「あの柏木さん」なのかもな。


「どうした?」


ボクが聞くと、急に笑い出した。


「だって、お姉ちゃんのヘアメイク、ソウちゃんパパがしてるんだもん。新郎のお父さんなのにおかしいよね」



今日のヘアメイクは親父が自ら張り切って「やる」と言い張った。

ルウコは「ソウちゃんパパいいの?」と大喜びだったけど。



「おかしな感じになってない?」


ボクが聞くとルミは首を振った。


「それがお姉ちゃん、すっごくキレイになってるの。ソウちゃんパパすごいよねー。あ、ルミの時はソウちゃんやってよね」


「そうだな」


ボクも笑って答えた。


< 158 / 209 >

この作品をシェア

pagetop